永代経と万部経碑
雀「本堂の中の壁も綺麗に塗り替えて、随分明るうなったなぁ。」
鳩「ああ、永代経等の寄付札を貼ってないからすっきりしたるなぁ。」
雀「この寺には永代経懇志の上納がないのんか。」
鳩「いいや、かなりの方が上げたはるよ。ただ、書いて貼ると、無用な競争 や見栄(みえ)の張り合いになったりするんやないかと、先々代から
貼らなくなったんや。」
雀「そう言えば寺報に上納者名が載ってたなぁ。だいたい永代経懇志って
何や。死んだ人がええとこへ行けるようにちゅう追善供養かいな。」
鳩「他宗はそうかもしれんけど、浄土真宗はちゃうで。先祖や私らの成仏は 仏様のひとり働きや。だから追善供養せんでもええねん。」
雀「有り難いこっちゃなぁ。」
鳩「追善供養せんならんのやと、こんだけでええんかいなと気の休まること
あらへん。阿弥陀さん丸抱えの極楽参りやから安心できるねん。」
雀「そうか。浄土真宗では、心配要らん喜びを永代にわって多くの人に
伝わるようにと懇志を上げるねんやな。」
鳩「上納者の名は、目立たん所に記入したるのが多いけど、例外は
『万部経碑』や。」
雀「本堂の東北前にある石碑やな。」
鳩「93年前、明治42年に浄照寺の基本財産にと、田地4段24歩
(約4046㎡)を100軒ほどで購入し、寄付してくれはった
記念碑や。」
雀「その田地、今どこにあるねん。」
鳩「大安寺と保津にあったそうやが、農地解放でもうあらへん。」
雀「折角の財産、惜しいこっちゃなぁ。」
鳩「いや、田地は小作してくれはった方への御礼や。寄付者の『浄照寺と
念仏のご法義繁盛』を願う志は今もなお脈々として生き続けてるで。」
雀「そうやなぁ。あの万部経碑は故人のために万部の経を読んでくれや
のうて、現代・未来永劫にわたって多くの人に、念仏の法が届けという
願いを表す碑やねんなぁ。」
鳩「あの碑見たら『信心頂いたか、聴聞してるか』と、
ご先祖から問われてると思わんならんなぁ。」