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それぞれに輝く  2006/6/21

「魚鱗癬(ぎょりんせん)」という病名を聞かれたことはあるでしょうか。
今年上旬に「難病と闘う子どもたち」というドキュメンタリー番組を見て、
私はその病気を初めて知りました。
「魚鱗癬」とは皮膚の角質層がうまく剥がれ落ちないために、皮膚が魚の鱗のようにカサカサになる難病です。

その患者であるRくんは、毎朝学校に行く準備だけで数時間かかります。それは、肌と洋服が触れるだけで痛みがはしり、また露出している足と手を刺激しないようにするためです。Rくんが準備をする途中で「痛いっ」と言うと、側にいるお母さんも一緒になって痛そうな顔をしているように見えました。他にもご飯を食べる時、歩く時など様々な場面で多くの痛みがあるようにおもいます。
もちろん、テレビを通して彼の生活のほんの一部分だけしか私は見ていませんのでいい加減なことは言えませんが、毎日の生活には想像も出来ない程の苦労があると思います。
しかし番組の制作者が「病気、嫌じゃない?」と尋ねると、
Rくんは笑顔で「僕は僕でいいと思う。」と答えていました。
私は、「大変だなぁ。」と思っていた自分とRくんの返事のギャップに
大変驚かされ、自分自身の生活をも思い返されました。

青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光 微妙香潔  
                          (仏説阿弥陀経) 

これは「青い花は青い光を、黄色い花は黄色い光を、赤い花は赤い光を、白い花は白い光を放ち、その香りは気高く清らかである。」といった
美しいお浄土の世界を表したものです。多くのいのちに支えられ咲く花は他の花と比べる事は出来ず、それぞれが、それぞれに美しい。
また、その個々の花は自らの輝きによって周りの花々の輝きを一層際立たせる。それは、他の花々を決して踏みにじるのではなく、互いに認め合い輝きあうのです。私には、Rくんの姿から上の御文が思い出されました。
彼が笑顔で「僕は僕でいいと思う。」と言ったことは、他の誰かと比べて言っているのではないように思えます。ただあなたがいるだけで素晴しいというような周りの方の想い、家族が側で一緒に生き、同じように心を通わせていることからRくんにそう言わしめたのではないでしょうか。

Rくんの輝きと、阿弥陀経の御文を味あわせていただいた時、私は自分自身の生活に深く反省させられると同時に多くの喜びに包まれました。
沢山のいのちの繋がりの中で、ようやく生きる事ができるのにも関わらず、自己中心の心から決して抜け出せる事はできない私です。
しかし、怠けて生きる私にも関わらず、
仏様は「あなたのいのちは、そのままで尊い。」と
願い続けて下さっています。そこには、他のものとの比較などなく、私という人間をそのままの姿で包み込んで下さいます。このような私の身には大変勿体無い事ではありますが、Rくんの輝きにふれ、また仏様の願いにふれさせていただいたとき、「なんていのちは輝いているのか。」
と味あわさせいただくことができたのです。                                           
                             釋 廣樹