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ほんこさん  (報恩講)  2006/11/20

「ごえんさん、今日は ほんこさん参ってや」
10月下旬ごろから、お参りに伺うとご挨拶もそこそこに、
このような会話が交わされることが多くなります。
日程が決められた地域もありますが、遠方にお住まいのお宅では毎年こんな風に決まることがありますので、心してお参りしなければなりません。
そういった家も数日前からお仏壇と仏具をピカピカに磨き上げ、赤い蝋燭とお赤飯などを準備万端整えて下さっています。

ご家族お揃いの中、お正信偈の勤めとご文章の拝読。

お勤めの後、お茶を頂いていますと殆どのご家庭で
「今年も色々あったけど、またこうしてほんこさんをお迎えさせてもろて、
ありがたいこっちゃ」しみじみとこんなお言葉をお聞かせくださいます。
そのお姿に自らの歩みが照らし合わさり、自然にお念仏がこぼれでて
くださいます。
地域により営み方は様々ですが、最上のお荘厳(おかざり)でお迎えすることもあり、温かく感慨深い雰囲気が、お仏間にじわじわと広がります。

この「ほんこさん」として親しまれるご法事は、浄土真宗において最も
大切にされている「報恩講」(ほうおんこう)です。

全ての仏事に甲乙はありませんが、それでもあえて申すならば報恩講を差し置いては、他の仏事を説明出来なくなるほど大切なご法事であり、報恩講に始まり報恩講で一年を締めくくると言っても過言ではありません。

そもそも報恩講は、親鸞聖人のご命日である、1月16日((1262年・弘長2年旧暦11月28日)の前後にご門徒各家・お寺そしてご本山で厳粛に勤められるご法事で、始まりは聖人の33回忌とされていますから700年以上も大切に伝承されて今に至っていることになります。

親鸞聖人が90年のご生涯をかけて私たちにお示しくださったことは、
「私(親鸞聖人)は、阿弥陀さまの大いなる願いに出遇い、わたしが救われるまことの道をいただいたお蔭で、ままならないはずの人生を力強く生き抜く事ができた。あなたも一度限りの人生のすべてを阿弥陀さまにおまかせし、お念仏申しながら幸せにくらせよ」ということです。
まさに「南無阿弥陀仏をお貰いし能く生きてくれよ」という大いなる願いをお届けくださいました。

ほんこさん真っ盛りの今、「恩に報いる」ことの大切さと難しさを味わい、
まことの道に出会うご法事として、丁寧にお迎えさせて頂きたく思います。
                                 釋智見